ガソリン暫定税率が廃止されたら… 年2万円の節約が“これっぽっち”に見える理由

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もしガソリンの暫定税率が廃止されたら、年間2万円の節約になると言われています。こう聞いて、あなたはどう感じましたか?「え、これっぽっち?」と思ったとしたら要注意。そこには、無意識のうちに家計や資産形成を妨げる“錯覚のワナ”が潜んでいるかもしれません。本記事では、「これっぽっち症候群」とも言える思考のクセを解き明かしながら、ガソリン税、制度設計、家計心理のリアルな裏側に迫ります。


目次

ガソリン暫定税率って何?なぜ今話題?

日本ではガソリンに対して、本来の「ガソリン税」に加えて、いわゆる“暫定”として導入された上乗せ分、いわゆるガソリン暫定税率が課せられています。この暫定措置は1974年に導入されたもので、当初は一時的な財源確保のためとされていました。しかし、その“暫定”の名とは裏腹に、制度は恒久化され、50年経った今でも撤廃されることなく続いており、1リットルあたり約25円が上乗せされたままの状態が続いています。

この25円という金額は、日々の給油では意識されにくいものの、1回あたり40L給油すれば1,000円の差となり、年に数回の給油を重ねることで年間では1万〜2万円超の負担増につながります。つまり、知らず知らずのうちに長期間にわたって家計から吸い取られてきた“隠れた固定費”とも言えるのです。

この暫定税率を巡っては、2025年の参議院選挙において引き続き国民民主党が「廃止」を公約に掲げる見通しです。背景には、長年続く物価高騰、特にガソリン価格の上昇による生活コストの増加が挙げられます。自動車が不可欠な生活インフラである地方や郊外を中心に、ガソリン代の高さが家計を直撃しており、「せめて暫定税くらいはなくしてくれ」という声が少なくありません。こうした声に応える形で、国民民主党は“庶民の味方”としての立ち位置を強めようとしています。

年間2万円?「これっぽっち?」症候群の罠

ガソリン暫定税率が廃止されると、実際にどれほどのメリットがあるのでしょうか?この問いに対する答えは、意外と見落とされがちな日常の数字に隠れています。

たとえば、年間10,000kmを走行し、燃費が12km/Lの車に乗っている場合、1年間のガソリン消費量は約833Lになります。この数字は一見小さく感じるかもしれませんが、そこに1Lあたり25円の暫定税率が課されているとすれば、

833L × 25円 = 20,825円

この2万円強という金額は、単に家計簿の一行で済まされるものではありません。たとえば、1回あたり40L給油するとすれば、毎回約1,000円の節約につながります。年間で20回程度給油する家庭なら、これだけで約2万円の軽減効果を得ることになります。

さらに、家族で車を複数台所有していたり、業務や営業に使うなど走行距離が長い世帯では、節約効果はさらに拡大します。年間15,000km〜20,000kmを走る家庭であれば、節約額は3万円〜4万円に達することもあり、見過ごせないインパクトです。

「え、これっぽっち?」と思った方も多いかもしれません。 しかし、ここに家計を圧迫する錯覚の本質があります。この“これっぽっち感”が、節約意識や制度改革への関心を鈍らせ、結果として長期的に数十万円単位の損失を生んでいることに、気づいている人は意外と少ないのです。

「これっぽっち」と感じる人ほど損をする理由

金額の絶対値だけを見て、「たった2万円か」と判断してしまう人は、実は普段から「これくらいいいか」で浪費しがちです。このような思考のクセは、日々の小さな支出を“どうでもいいもの”として見過ごし、結果的に家計全体をじわじわと圧迫していきます。

  • 月額980円のサブスクを複数契約し、どれが必要かを精査せず惰性で継続
  • 1日1本の缶コーヒーを毎日買い続け、1年で3〜4万円の支出になっている
  • 通信料・保険・手数料を「見直すのが面倒」とそのまま払い続ける
  • セールやポイント還元に釣られて不要なものまで購入してしまう

これらはそれぞれ数百円〜数千円の支出に見えても、積もれば年数万円の家計漏れになります。そして、それが5年、10年と続けば、金利や運用益の差も含めて、最終的には100万円単位の損失に繋がる可能性もあるのです。

「これっぽっち」の積み重ねが、10年後の資産形成を分けるのです。

さらに、20,000円という数字は「あっても使わないで済むお金」に近く、消費で消えてしまうよりも、将来の資産形成に向けて活かすことができる金額です。たとえば、年利3%で20年運用すれば約36,000円に増え、これを毎年継続すれば、複利の力で10年後には50万円、20年後には100万円近い差になることもあります。つまり、「これっぽっち」と切り捨てた金額が、実は“未来の自由”と引き換えになっているかもしれないのです。

ガソリン代のリアル:家計に与える本当の影響

2024〜2025年にかけて、全国平均でガソリン価格はリッター170〜180円という高水準が続いています。時期や地域によっては、これを超えることもあり、特に地方では公共交通機関の代替が難しいため、車が生活必需品となっている家庭も少なくありません。都市部では多少の交通代で済む場面でも、地方では「車がなければ生活できない」状況が当たり前であり、ガソリン価格の変動がそのまま生活費に直結します。

通勤や子どもの送り迎え、買い物、病院への通院など、日常の足として車を使う家庭にとっては、ガソリン代はもはや変動する“光熱費”ではなく、半固定化された生活コストとなっています。電気代や水道代と同じように、毎月必ず発生する支出であり、削りたくても削れない「実質的な固定費」として家計に重くのしかかっています。

たとえば、月800km走る家庭(年間約9,600km)で、燃費が12km/Lなら月67Lの給油が必要になります。リッター170〜180円とすれば、月あたり約11,390円〜12,060円のガソリン代がかかります。これは年間では約137,000円〜144,700円となり、ひと月の電気代に匹敵する額です。さらに、これには25円/Lの暫定税が含まれていることを考えると、年間約20,000円以上が「税として上乗せ」されている状態であり、**ガソリン代が家計に占める比率は決して小さくありません。**その負担感は、一見目立たなくても、じわじわと暮らし全体に影響を及ぼしているのです。

「可視化されない節約」は記憶に残らない

人は“目に見える得”には反応しやすく、逆に“静かな負担軽減”は記憶に残りづらいものです。これは心理的に「可視化された利益」ほど評価されやすく、無意識のうちに記憶や行動に影響を与えるからです。たとえば、

  • 給油時に「暫定税率分▲1,000円」とレシートに印字されれば印象は強く、「今月はいつもより得した」と実感しやすい
  • 家計簿アプリに「今月の制度による節約額」と表示されれば、節約の達成感や“家計をコントロールしている感覚”が強化される
  • 毎月の請求明細に「優遇制度により割引済み」と一言記載されるだけでも、認識の鮮明さが大きく異なる

ところが、現実の制度はこうした視覚的な補助や通知がほとんどありません。そのため、実際にはそれらが日常に埋もれ、気づかれずに終わってしまうことが多くなってしまいます。意識されないメリットは“なかったこと”として処理されやすく、結果として「効果が薄い」と思われ、制度改革の支持も得にくくなる構造ができあがっているのです。

制度は錯覚を前提に設計されている

再エネ賦課金、消費税(内税方式)、そしてこの暫定税率──。 これらの制度の多くは、「気づかせずに徴収する」ことに設計上の工夫があります。

  • 電気代にしれっと含まれる賦課金(年間1万〜1.6万円)
  • 税金に税金をかけるガソリンの“二重課税”構造
  • レシートや明細に明記されないため、支出としての実感が薄い

国民が「これくらいなら…」と感じてくれることを前提に、粛々と徴収される仕組みなのです。しかも、その徴収は日常に溶け込みすぎており、ほとんどの人が気づかぬまま支払っているのが現実です。

さらに、こうした仕組みを支えるのは単なる無関心ではなく、「明確な抵抗を受けづらい制度設計」です。複雑な仕組みにすればするほど、理解するのに手間がかかる。そうなれば、問題視されることも少ない。いわば、制度の背後に“わかりづらさ”という防壁があるのです。

そして、政党もこの「感じ方」を巧みに計算しています。国民民主党があえて「年2万円の節約」と明言しないのは、「これっぽっち」と思われてしまうことを恐れての戦略的判断とも読み取れます。逆に言えば、数値を出した瞬間に“過小評価”されることを知っているからこそ、抽象的な「負担軽減」や「生活支援」という言葉にとどめているのです。

「これっぽっち感」が生む政治的盲点

選挙で掲げられる政策の中で、「インパクトのある数字」ばかりが注目されがちです。

  • 一律給付金「10万円」
  • 所得税減税「家族4人で最大16万円」
  • 子育て支援金の拡充「最大年間30万円相当」

こうした派手な金額や即効性のある施策は、確かに目を引きますし、報道でも繰り返し取り上げられるため、印象に残りやすいのです。

これらに比べて、ガソリン税の「年2万円の軽減」は地味に映ります。しかし、それが毎年続く制度改正だったとしたら?

  • 10年で20万円
  • 車2台家庭なら実質40万円
  • 加えて、車を手放さず乗り換える家庭なら、20年で最大80万円以上の負担軽減になる可能性もあります
  • そして実際には、すでに50年間も“これっぽっち”を取り続けられてきたわけです

目立たないが着実に効く──そうした“地味だけど効く政策”こそが、生活の安定に直結する現実的な一手なのです。

選挙においては「瞬間的な得」ばかりに目を奪われがちですが、こうした積み上げ型の恩恵に光を当てる視点こそ、私たち有権者にも必要ではないでしょうか。

「これっぽっち?」症候群から目を覚ませば、家計も政治も変わる

「たったこれだけ」と軽視した制度が、実は毎年あなたの家計から数万円ずつ静かに奪っているかもしれません。

この“これっぽっち感”は、知らないうちに生活の隅々に染み込んでいます。そして気づけば、数年で何十万円もの違いになっていた──そんな現実が、私たちのカーライフには起きているのです。

無駄な出費に気づくことができれば、その分をメンテナンスや燃費向上アイテム、安全装備の強化など、より快適で安心なカーライフに再投資できます。言い換えれば、「浮かせたお金は、運転の質を高める投資」になり得るのです。

気づいた人から、財布が守られます。 気づいた人から、制度にも目を向けられます。 そして、気づいた人は“知識の武器”を手に入れ、行動の質を高め、より健全で持続可能なカーライフを手に入れていけます。

制度を変えるのは政治です。でもその政治を動かすのは、私たち一人ひとりの意識です。たった1票と思わずに、選挙にはぜひ足を運びましょう。

そして何より──気づいた人から、家計を整え、快適なカーライフと未来の資産を両立できる力が身につきます。

暫定税率廃止を「小さな話」と切り捨てる前に、一度、計算してみてください。数字にすれば、“錯覚”の正体が見えてきますし、そこからカーライフを変える第一歩が始まるかもしれません。

たった2万円を笑う者は、静かに奪われていることにも気づけない。

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